発達障害とは

発達障害

発達障害というのは、脳機能がアンバランスに発達するなど、先天的に脳の発達が通常と異なってしまうことで起きる様々な症状のことを言います。詳しい原因は特定されていませんが、比較的年齢が低い頃から特徴的な思考や行動がみられるようになります。

発達障害の種類

発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害に分類されます。発達障害の患者さま(お子さま)の脳は、認知機能(記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などをする機能)が偏っていると言われています。そのため、ある分野においては優れた能力を発揮するものの、違う分野においては極端すぎるほど苦手という場面がみられ、その落差は日常生活に支障をきたします。発達障害を完治させることは困難ですが、治療によって支障が出ている部分を緩和させていくことはできるようになります。

自閉スペクトラム症(ASD)

従来は広汎性発達障害とアスペルガー症候群に分類されていましたが、これらがひとつにまとめられ、自閉スペクトラム症となりました。この場合、幼児期に保護者などが気づくケースが大半ですが、成人になって発見されることもあります。割合としては男性の方が多いと言われています。

自閉スペクトラム症は、コミュニケーションの障害、限定的な興味や活動、反復的な行動がみられます。例えば、人の気持ちを理解することが苦手、冗談が理解できない、表情や目配せだけでは相手の意図することが読み取れない、興味のあることのみを一方的に話し続けるといったことです。さらに同一性へのこだわりや興味、関心の狭さなども挙げられます。なお小児の場合は、言葉が遅い、目線を合わせない、人見知りをしない、相手の言葉をおうむ返しするといった特徴がみられます。このほか、知覚過敏や知覚鈍感などの知覚異常が伴うこともあります。

発症の原因については特定されているわけではありませんが、先天的な脳機能障害と言われ、家庭環境や外部要因によって影響されるということはありません。

治療について

自閉スペクトラム症を完治させる治療法は確立していません。そのため、症状を抑える薬物療法や行動を変える行動療法などを行っていきます。小児の患者さまの場合、コミュニケーションの発達を促すための療育をしていくことで、適応力を伸ばしていきます。これによって、環境が変わることに対する不安なども減少していくようになるので、これまで苦手としていた集団活動への参加意欲も高まっていきます。思春期以降の患者さまでは、まず過度なストレスや生活上の変化の有無について調べていき、原因が判明すれば環境を調整していくようにします。そのうえで、不安やうつ症状がみられるという場合は、抗不安薬や抗うつ薬を使用していきます。

注意欠如・多動性障害(ADHD)

注意欠如・多動性障害(ADHD)も、脳の機能異常によって引き起こされる発達障害のひとつです。不注意、多動・衝動性の2つの症状が見られている場合にADHDと診断されます。学童期によくみられるもので、この症状を放置したままでは学習活動に支障がみられるようになります。発症の原因については完全に明らかとなったわけではありませんが、脳内の神経伝達物質のひとつであるノルアドレナリンが不足することで起きるのではないかと言われています。

ちなみに成人でもADHD患者さまはいます。その場合は多動性の症状が出ることは、ほぼありません。ただ注意力の散漫による仕事上のミスが多い、約束や時間を守れないといったことがよくみられるようになります。

治療について

ADHDの治療では、薬物療法や環境調整が行われます。薬物療法では、神経伝達物質(ノルアドレナリン)を増やすため、アトモキセチンやグアンファシンなどを使用します。環境調整は、患者さまによって異なりますが、例えば勉強をしやすくするために机の周囲に集中を妨げる物を置かない、こまめに休憩をとるなどして飽きさせない、といった周囲のサポートが欠かせません。やたらに叱責することは、他の精神症状に影響しかねますので、じっくり対応するなど周囲の理解も必要です。